黒蝶々の羽に黄色

「何も無いのがとりえです」

そう自己紹介する人がいたらどうだろう。

「すかしてやがる」たいていの人は内心そう感じるのではないだろうか。

そんなことないかな。ごめんなさい。

私は謝ることが癖であった。

小学生の頃、お遊戯で「ごんぎつね」の演し物をやった。友達もおらずクラスで一言も喋らなかった存在感のない私は、何故か主役級のごんぎつねを演じることになる。

劇の練習中、演技に力が入りすぎてズボンがビリビリと裂けてしまった。おしりの割れ目に沿って裂け、白のブリーフがジーンズのホットパンツから顔を出した。

そのあとの記憶が無い。

小学卒業アルバムの寄せ書きに、クラス1親切だった宏美さんがピンク色のペンで書いてくれた。「そのままの〇〇くんでいてね」

マツコ・デラックスは家で全裸で過ごしているとテレビが言っていた。

そりゃいいかも。私も全裸になりキッチンの換気扇の下でカフェオレを飲む。

おならが出る気配がしたので、そっと逃がしてやると軟水を出してしまう。

高校は電車で登下校していた。帰りの電車に揺られながら私は三島由紀夫の「仮面の告白」を読んでいた。大変に格調高い品のある文章だったが、私が今書いているものも「仮面の告白」だ。

いつからか私はセンチメタルであることを美学としていた。センチメタルが自己欺瞞であることは当の本人が最もよく知っているのではないだろうか。

中学生になって、クラスの最下層である私が恋をした。相手は学校1美しく可愛いと評判の人。ストレートの黒美髪のその人が、所属するダンス部で音楽に合わせて踊る姿は神々しい。

私は変だろうか。

その女神を学校で見かけるたび、私は丁寧に挨拶をした。「おはようございます」「こんにちは」ここは社交界か?なにかの儀式か?

女神に膝まづきたい思いを胸中ひた隠しに隠して、私は感じよく言葉をかけた。

人生何が起こるかわからない。これもまた1つの真実ではある。

最下層の白ブリーフと、学校1の女神。この2人は恋をした。

たくさんの美しい出来事があった。

周囲の人達は信じられないように見ていたが、私達はいつもくすくす笑う。

ヤンキー達も何故か私には絡んでこなかった。

生まれてきた人間は皆傷をもっているし、時として傷は護りの宝石となる。

肌の柔らかな温もりを知り、夜雨が2人の傘に落ちる音が印象的だった。

私はその後ひきこもり精神を病む。

長い年月が流れた。

そして私は全裸で四つん這いになりながら、キッチン床の自分の汚れを拭いている。

誰人であれ、汚泥に塗れていても、、、

私は何も言うまい。

現在の私の悩みは、尿の切れが悪くなってきた事だ。